空気調和・衛生工学会 九州支部

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受賞実績一覧

九州支部での受賞実績

慈愛会 奄美病院

「素朴な癒しの建築」、「徹底したランニングコストの低減」を目指した環境建築

企画・運営:(財)慈愛会 奄美病院
計画・設計・監理:(株)日建設計
施工:(株)鴻池組 九州支店
空調・衛生設備施工:(株)九電工

 本業績は、鹿児島市の南350kmの名瀬市内南部に建設された精神科医療施設である。外気温度が夏季25~30℃、冬季15℃前後、年間の雨量も2,800mmを越えて日本の平均降雨量の2倍にもなり四季を通じて温暖多湿であり、地下水にも恵まれている。さらに年間を通じて南北の海風・陸風が卓越しており、多湿にも拘わらず通風が利用できる環境にある。このような地域性を生かして空気調和・衛生設備と建築計画をうまく融合し、建物全体として調和の取れた省エネルギー施設を実現している。具体的には、以下の5項目を主眼に良質な建築環境を構築している。
 本業績の主たる評価点は、以下のとおりである。

  1. 自然通風の有効利用
     20床前後を1ユニットとし、各階6ユニットが中庭を中心にクラスター状に配置されており、北からの海風と南からの山風を利用し、風のテラスを通して病室の自然換気を行っている。精神科医療施設ということで例えば開口部は少ししか開放できない(開口幅10cm以下)などの建築計画上の制約を、旨く工夫して通風の促進を図っている。さらに、庇と屋上緑化で冷房負荷を低減し、サーキュレーションファンで涼風を得て、自然通風のみで快適空間を得ている。また、保護室はガラス温室の集熱効果を利用したヒートチムニーで温度差換気を行っている。
  2. 自然採光の積極利用
     太陽高度が高いため、庇が効果的である。庇で直射光を遮り、やさしい昼光を取り入れるため大きな窓を採用して、照明負荷の低減を図っている。
  3. 地下水の有効利用
     年間を通じて21℃前後と安定した豊富な地下水を循環使用して、積極的に冷暖房に使用しているほか、飲料水の90%を地下水で賄い、ランニングコストの低減を図っている。
  4. 高効率機器の採用
     盛夏時の冷房負荷を処理する設備システムは、最高効率の機器を採用している。このような省エネルギーシステムは、一部NEDOの補助を受けて実施されており、運転実績が報告されている。また、CASBEEでも環境負荷が小さく、品質性能も優れたレベルであることが確認されており、クラスSに近いAの評価を得ている。
  5. 管理・運営体制の機能
     以上の評価点は設計思想に負うところも大きいが、それにもまして病院側の省エネルギーに対する高い意識と積極的な参画によって、徹底したランニングコストの低減を実現している。特に、温湿度条件設定の柔軟な運用により、年間を通じほぼ主熱源を運転しないで、地下水で冷暖房を行ったことも大きな特徴である。

 本業績に限らず、近年、ダブルスキン、エアフローウィンドウ、躯体蓄熱、通風と冷房の併用等、建築計画と設備計画が融合した事例が出現してきており、どこまでが建築で、どこからが設備かという線引きがなくなってきている。このような建築計画と設備計画の融合は、今後のより効率的なサスティナブル建築が志向すべき重要な方向性の一つといえる。本業績が、精神科医療施設という事例を通じて、この課題にチャレンジしたことは高く評価できる。

 よって、本業績は空気調和・衛生工学会振興賞技術振興賞に値するものと認める。

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