空気調和・衛生工学会 九州支部

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受賞実績一覧

九州支部での受賞実績

J飯塚市庁舎におけるZEBとウェルネスの両立の実現

飯塚市庁舎におけるZEBとウェルネスの両立の実現

計画・監理・検証  : 株式会社 佐藤総合計画 九州オフィス
施主・計画     : 飯塚市
検証・評価     : 近畿大学教授 依田浩敏氏
施工・検証協力   : 株式会社 菱熱
施工・検証協力   : 有限会社 三成工業

 本業績は、福岡県飯塚市に所在する地上8階、延べ面積約18,300m2、基礎免震を採用したS造の市庁舎である。築後約48年を経過した旧庁舎の建替えにより2017年2月に竣工したもので、市民サービスの向上に資する空間提供を主眼に、窓口視認等の容易性・利便性が高く(ウェルネス)、効率性・経済性が高く(ZEB)、安全・安心が確保できる(BCP)新庁舎が目標とされた。敷地の制約から北側にコアを集中させた「コの字型プラン」とし、その中央に配したエコボイドによる自然通風と採光、庇とルーバを外装したファサードデザインによる外皮熱負荷の低減に加えて、床放射併用空調とウォールスルーユニット空調を組み合わせた執務空間の環境形成により、省エネルギーとウェルネスの両立を図っている。これらの検証と改善は、独自の環境評価ツールを用いて、設計・施工段階から竣工後の現在まで、継続的に実施されている。
 本業績の主たる評価点は、以下のとおりである。

  1. 庁舎南面は、ハーフPCによる水平庇で構成され、直達日射を遮蔽する。庁舎東西面はパンチングパネルの垂直ルーバで構成され、日射制御と室内からの見通しの確保を両立している。これらによる外皮の熱負荷の低減と執務空間の快適性向上を図っている。
  2. 気流感が小さく放射効果が得られる床放射併用空調と、残業や休日の個別対応が可能で利便性の高いウォールスルーユニットを組み合わせ、空調運転時間の削減、室内設定温度の緩和などを図っている。また、執務者へのアンケート調査を行い、温熱環境、気流環境の実態把握と運用改善によってウェルネス向上に努めている。
  3. 階段室上部に風道(高さ10m)を設け、その上部に自然換気窓を設けることで温度差換気を促進し、空調用消費エネルギーの削減と執務効率の向上を図っている。自然換気窓を室内外のエンタルピ差で制御することで、中間期の空調機稼働時間が短縮され、室内空気環境の実測調査によって換気の効果も検証されている。
  4. 自然採光を積極的に導入するとともに、昼光を考慮した自動適正調光制御、プログラムタイマー制御、在室検知制御の導入、さらに高効率照明(LED)の採用により、照明設備全体での省エネルギーを図っている。

 建築的工夫のパッシブ技術と効率的でアメニティ性の高いアクティブ技術の融合でZEBとウェルネスの両立を目指した結果、運用1年目での一次エネルギー消費量が696MJ/(m2・年)となっており、これはWEBプログラムによる基準一次エネルギー消費量(標準庁舎相当:1,487MJ/(m2・年))の53.2%削減に相当し、実績値でZEB Ready を達成している。2年目には、照明設備の制御改善により一次エネルギー消費量を686MJ/(m2・年)に、3年目にはウォールスルーユニットの発停方法の改善で一次エネルギー消費量を664MJ/(m2・年)(約56%の削減)としている。また、CASBEE-WOによる自己評価ではSランクを達成していることから、快適性を損なうことなくZEB化が実現されている。

 よって、本業績は空気調和・衛生工学会振興賞技術振興賞に値するものと認められる。

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