空気調和・衛生工学会 九州支部

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九州支部での受賞実績

博多駅南RビルにおけるZEB改修効果の評価・検証

博多駅南RビルにおけるZEB改修効果の評価・検証

計画・設計・分析評価  : ㈱菱熱
計画・設計       : 西日本技術開発㈱
分析評価        : 住吉大輔

[推薦文]
 本業績は、福岡市博多区に2003年に竣工した既存中規模オフィスビルを2020年3月に設備改修によりZEBを実現したもので、改修の計画・工事・導入効果を省エネ性と快適性の観点から検証をしている。地上8階、延床面積5,536.63㎡、鉄骨造の建物であり、2階から5階には竣工時から躯体蓄熱空調が導入されている。今回の改修では主に設備機器の更新を行っており、躯体蓄熱空調の設備容量の最適化、高効率マルチパッケージへの更新、既存氷蓄熱ユニットの廃止と高効率な直膨式外調機の採用、全館LED照明の採用、画像センサーによる空調・照明制御の導入、CO2濃度による外気量制御、太陽光発電設備・蓄電池設備の導入によりZEB化がなされている。
 本業績の主たる評価点は、以下のとおりである。

  1. 既設の躯体蓄熱空調システムの設備容量の最適化と運用方法の変更:従来の氷蓄熱マルチパッケージを廃止して非蓄熱の高効率マルチパッケージに変更している。また、更新された高効率マルチパッケージの最適な運転時間について実験により検討した結果、エネルギーと室内環境の両面から考え、夏季は蓄熱時間3時間または蓄熱時間2時間+放熱時間0.5時間、冬季は平均外気温が10℃以上の場合には蓄熱時間1時間10℃未満の場合は蓄熱時間2時間とした運用方法に変更をしている。
  2. 画像センサーによる空調・照明制御:天井面に画像センサを設置し、在席検知による照明の点滅制御および調光制御を導入するとともに、在席検知の信号を空調側にも取り込み、在席状況に応じて躯体蓄熱エリアの床吹出口を開閉させると同時に室内機送風量を制御して省エネを図っている。
  3. CO2濃度による外気量制御:直膨式外調機にCO2センサとVAVによる外気量制御を採用している。空調系統毎にCO2濃度を検知して導入外気量を制御することにより外気負荷を低減するとともに、給気静圧を検知して外気ファンのインバータ制御を行っている。
    一部のフロアに設置している全熱交換器についてもCO2センサによる導入外気量の制御を行っている。
    また、ナイトパージ機能を有しており、夏季室内外温度差を検知して夜間自動外気冷房運転を行うことで、翌朝の冷房負荷の低減を図っている。
  4. 改修前後における建物の省エネルギー効果と快適性:今回の改修計画により基準一次エネルギー消費量に対して設計値で58%の削減となり「ZEBReady」を達成し、BELS認証(★★★★★)を取得している。また、設備更新と運用方法の変更により、2020年度のエネルギー消費量実績値は基準一次エネルギー消費量に対し72%削減し、「NearlyZEB」に近い運用実績となっている。また、改修前後の建物全体の電力消費量に着目すると、2020年度は改修前の2018年度比で、空調の高効率パッケージ採用等で15.2%、全館LED照明採用で12.5%、氷蓄熱から非蓄熱パッケージへの更新で9.7%、太陽光発電設備更新で5.0%、他0.6%を加えて、合計43%電力消費量を削減出来ている。
    在室者100名に対するアンケート調査の結果、全体的には快適であり、ZEB改修後も良好な室内熱環境を実現できていることを確認している。

 本業績は、高効率機器の導入や空調設備容量の最適化、センサ等による空調・照明の制御などの省エネ手法を取り入れ、運用において計画値以上のエネルギーの削減実績が得られている。また、アンケート結果よりZEB改修後も良好な室内環境が実現できていることを示している。

 よって、本業績は空気調和・衛生工学会振興賞技術振興賞に値するものと認められる。

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