空気調和・衛生工学会 九州支部

TopPage

R4年度

R2年度

R1年度

平成31年度

平成30年度

平成29年度

平成28年度

平成27年度

平成26年度

平成25年度

平成24年度

平成22年度

平成21年度

平成20年度

受賞実績一覧

九州支部での受賞実績

熊本桜町再開発

地下水都市熊本における大規模かつ持続可能な地下水利用熱源の計画と実施

計画・設計・検証  : ㈱日建設計
計画        : 熊本桜町再開発㈱
計画        : 九州産業交通ホールディングス㈱
計画・検証     : ㈱関電エネルギーソリューション
評価・検証     : ㈱日建設計総合研究所
計画・実測・分析  : ㈱日さく

[推薦文]
 本業績は、「熊本桜町再開発」において、大規模ながら環境的に持続性のある高効率な地下水利用熱源システムの計画、運転検証および地下水利用の持続性を高める工夫を行い、導入した工夫の効果を運転検証している。対象建物は2019年9月に竣工したバスターミナルを中心とした大規模な商業・ホール施設で、延床面積は164,100.85㎡である。
 本業績の主たる評価点は、以下のとおりである。

  1. 大規模ながら環境的に持続性のある地下水熱利用をするため、既存井戸所有者への聞き取り調査により地下水流方向・速度・温度を把握するとともに、シミュレーションにより、揚水還元による地下水位の影響範囲の特定、地下水温度変化の予測を行っている。また、持続可能な地下水利用にあたり、4本の揚水井戸ローテーションによる地下水位保全、大気開放しないシステムによる地下水水質保全、周辺井戸より深い150mからの揚水による周辺井戸への影響低減他、地下水量保全や水質維持に配慮した高効率な熱源システムを計画している。
    また、熱源システムに関しては、地下水温度22℃と施設の熱負荷特性を考慮した高効率熱源機器(熱回収ターボ冷凍機、冷水・冷温水蓄熱槽、INVターボ冷凍機)を選定するとともに、地下水利用が出来ない場合を想定した熱源構成(冷却塔・モジュールチラー・吸収式冷温水機)を構築している。
  2. 運転管理者と設計者・性能検証者が連携して、BEMSデータ等の情報を基に、熱負荷、冷水製造に関する運転効率、二次側送水ポンプの運転、冷熱源機器の運転順序等の現状把握・運転性能確認・課題抽出から改善提案を行う「運転検証」を実践し、高効率機器の運転割合の増加(INVターボ冷凍機5%増加・熱回収ターボ冷凍機17%増加)、熱源システムCOPの向上(年平均システムCOP14%向上)等、確実に熱源システムの運転性能の向上を図っている。
    また、LCEMツールによる熱源のシステムシミュレーションを活用した地下水利用熱源システムの機能適正化を行った結果、現状の熱源システムの運転管理の妥当性を示すとともに、適切な地下水利用時期を示している。
  3. 地下水利用の持続可能性を高めるために、地下水熱利用の効果向上(還元井戸周辺の土壌と地下水への蓄熱による高いシステムCOP1.64の実現)、周辺地域への影響度確認(水温・水位・水質の変動なし)、適正な地下水利用のマネジメント(揚水量の62%を地中に還元し地下水量を保全、冷却塔補給水量の50%低減)および省エネルギー建築の実現(2021年の年間一次エネルギー消費量実績値1,427MJ/(㎡・年)は同じ気候区分の商業施設の平均値4,158MJ/(㎡・年)の34%)に関連する工夫とその実現状態の確認を行っている。

 本業績は、地下水資源が豊富な地域である熊本において商業・ホールを有する大規模な建物を対象に、地下水熱を持続可能かつ効果的に利用するための準備と工夫の具体化を行い、導入した工夫の効果を運転検証することで確実な成果を得ており、今後も同システムの性能維持に活用されることが期待される。

 よって、本業績は空気調和・衛生工学会振興賞技術振興賞に値するものと認められる。

Pagetop