空気調和・衛生工学会 九州支部

TopPage

R4年度

R2年度

R1年度

平成31年度

平成30年度

平成29年度

平成28年度

平成27年度

平成26年度

平成25年度

平成24年度

平成22年度

平成21年度

平成20年度

受賞実績一覧

九州支部での受賞実績

サンエー浦添西海岸PARCO CITY

-沖縄の地域性を活かした先導的省CO2技術を活用した商業施設-

設計・施工  : ㈱竹中工務店
施工     : 三建設備工業㈱

[推薦文]
本業績は、沖縄県浦添市に所在する地上6階、延べ面積約224,020m2、S造の商業施設である。蒸暑地域が抱える3つの課題:年間を通し冷房需要があるため空調エネルギーが大阪の約2倍になること、多湿外気の除湿、再生可能エネルギーの効果的活用、に対応するための空調設備の計画・設計、施工に取り組んでいる。その北・南・東側は米軍基地に隣接し、建物西側には県南北を結ぶ主要幹線道路が通り、その先は東シナ海に面している。沖縄からの「省CO2発信」、「地域・社会との連携創造」を整備コンセプトとして掲げ、沖縄県に本社を置く㈱サンエーと、国内外にファッションビルを展開している㈱PARCOとの合同出資による沖縄最大級の大型商業施設建設プロジェクトである。米軍牧港補給地区西海岸の新しい埋立地に建設された最初の建築物として、2019年6月にグランドオープンを迎えている。
 本業績の主たる評価点は、以下のとおりである。

  1. 冷房専用セントラル空調の熱源機器の一次側に高効率ターボ冷凍機を採用し、年間冷房運転の高効率化を図っている。熱源システムのCOPは5.8である。また冷水二次側の搬送動力を低減するために、外調機還り冷水をFCUにカスケード利用し、往き水温5~12℃と戻り水温20℃の温度差は最大で14.8℃、平均で11.3℃の送水を実現している。ポンプ運転効率を示す水搬送システムの成績係数WTFの年間平均値は64である。
  2. 外皮からの空調負荷を最大限低減させる建築計画である。建物西側中央のフードコート部分のみ眺望のためのLow-eガラスの窓を設け、それ以外の外壁には窓を設けていない。建物屋根面は2層の駐車場をダブルスキンとして配置している。
  3. 外調機による過冷却除湿により多湿外気負荷を低減している。自己再熱型外調機を開発し、初めて建物に適用している。外気の過冷却除湿・再熱と、内部負荷の一部をその外調機で処理し、室内の顕熱負荷のみFCUで処理する潜・顕分離空調である。1階スーパーマーケットでは、冷凍ショーケース着霜防止のためデシカント外調機で除湿し、消費電力を2.8~5.8%削減している。
  4. 補助熱源として自然エネルギーを活用している。沿岸地域の豊富な地下水を利用するプレクールコイルの設置、本州の中間期と同程度の冬期気候を利用したナイトパージの実施、太陽集熱によるデシカント空調用熱源が採用されている。
  5. 津波や高潮、台風や塩害といった災害を防止する設計、施工である。室外機は全て建物屋上に配置し、沖縄防錆塗装および害虫駆除用電撃器が施されている。運転効率向上とコイルフィンの除塩と劣化防止のため、軟水器付き散水システムが採用されている。主要な基幹設備は上層階の充分な容積が確保された屋内機械室に配置し、機械室天井には将来の大型機械装置交換を見据えた大規模点検口が設けられている。

 これらの沖縄の地域性を活かした先導的な省CO2技術導入により、2021年度の1次エネルギー消費量(実績)は261,535GJ/年となり、同規模の一般的商業施設の省エネルギー計算による基準値に比較して40%削減されている。そのうち9%は空調設備技術、14%は空調設定温度ならびに熱源運転調整と照明消灯等の運用上の取組が寄与している。また年間CO2排出量20,769t-CO2/年も43%削減している。

 以上のことから、本業績は空気調和・衛生工学会振興賞技術振興賞に値するものと認められる。

Pagetop