空気調和・衛生工学会 九州支部

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受賞実績一覧

九州支部での受賞実績

嘉麻市庁舎の環境設備計画

嘉麻市庁舎の環境設備計画

計画・設計・検証  : ㈱久米設計九州支社
施工        : 新菱冷熱工業㈱九州支社
施工・検証     : 千代田計装㈱
施工・検証     : ㈱ビーリッジ

[推薦文]
 本業績は、1市3町の合併で誕生した福岡県嘉麻市の新庁舎として2020年3月に竣工したもので、地上6階、延べ面積約9,650m2、基礎免震を採用したRCを主構造とする建物である。安心・安全性確保とイニシャルコスト縮減を両立させたコンパクトな「矩形」の外観が、北部九州最大の遠賀川沿いの豊かな敷地に彫刻的な景観を創出している。シンプルな外観の内側にクランク状のボイドを配し、中央に浮遊する市議会室を内包するとともに、このボイドが光や風の道として機能している。室内は吊り天井を排除したフラットな天井面により生まれる床下空間を、床吹出空調のダクト展開やチャンバスペースとして活用するなど、庁舎全体が合理的にデザインされている。また、嘉麻市の気候特性である「昼夜の温度差」や「一定しない風向」と共生したパッシブ・アクティブシステムの導入に加えて、汎用性の高い省エネルギーで快適な先進システムを積極的に導入し、その成果検証に継続的に取り組んでいる。
 本業績の主たる評価点は、以下のとおりである。

  1. 正方形の平面プランと基準階3.6mの階高設定により外皮面積を最小化し、扁平柱と扁平梁で構成されるアウトフレームで日射を制御するとともに、ウィンドキャッチとして通風を促進させることで熱負荷の低減を図っている。年間冷房負荷の実績値(145MJ/(m2・年))から、一般事務所ビルの基準値(293MJ/(m2・年):空気調和・衛生工学会便覧)に対して約50%を削減している。
  2. 夏場でも夜間の外気温が低下する気候の特性を活かし冷水蓄熱システムが採用され、昼間は空冷モジュールチラーから送水温度を緩和した中温冷水を供給するダブルコイルシステムとすることで、熱源全体のCOP向上を図っている。2020年~2021年の冷却運転時の期間COPは、送水温度の緩和効果も寄与し平均4.57、昼間の空調時間帯で平均5.1となっている。
  3. 低温送風と変風量方式により空気搬送動力を低減した床吹出空調システムを採用し、低負荷時にファンを停止する低負荷モードの設定やこれらに対応させて新規開発した吹出口の導入で、快適性と省エネルギー性能の向上を図っている。実環境での上下温度分布等から空調システムの有効性を検証し、低負荷モードでのファン停止により434.6GJ/年の一次エネルギーを削減している。
  4. 執務室となる大部屋では、空調時の簡易エアバリアに加えて、外気冷房、自然換気、ナイトパージモードの切り替え可能なペリメータシステムを導入し、自然や空調システムとの連携を図るとともにその汎用性を実証しており、中間期の運用実績から空調を稼働させずに室温が維持できることを実証している。

 これらの空調設備に加えて、種々の省エネルギーシステムの採用により、年間の一次エネルギー消費量は2020年度が759.3MJ/(m2・年)、2021年度が792.5MJ/(m2・年)となり、省エネルギー計算(標準入力法)基準値と比較して、2020年度が約49%、2021年度が約46%の削減となっている。空調設備のみで2年平均327.3MJ/(m2・年)となり、基準値848.45MJ/(m2・年)に対して約61.2%の削減となっている。

 よって、本業績は空気調和・衛生工学会振興賞技術振興賞に値するものと認められる。

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