R5年度
R4年度
- 嘉麻市庁舎の環境設備計画
- サンエー浦添西海岸PARCO CITY-沖縄の地域性を活かした先導的省CO2技術を活用した商業施設-
- 熊本桜町再開発地下水都市熊本における大規模かつ持続可能な地下水利用熱源の計画と実施
- 博多駅南RビルにおけるZEB改修効果の評価・検証
R2年度
R1年度
平成31年度
平成30年度
平成29年度
平成28年度
平成27年度
平成26年度
平成25年度
平成24年度
平成22年度
平成21年度
平成20年度
新日鐵住金エンジニアリング北九州技術センター
先進的な自然換気システムおよび地中熱ヒートポンプシステムを導入した
技術センターにおける環境配慮設備の構築と検証
計画・設計・施工・監理: 新日鐵住金エンジニアリング(株)
性能検証 : 龍 有二
性能検証 : 白石 靖幸
性能検証 : 葛 隆生
本業績は、北九州市におけるゼロ・エネルギー・ビルを目標とするオフィスビルの計画と分析に関するもので、企画、設計、工事、運用まですべて自前で行う自社ビルであるという特徴を最大限に生かした野心的な作品である。このオフィスビル(新日鐵住金エンジニアリング北九州技術センター)にはさまざまな環境配慮技術、ゼロ・エネルギー化のためのアイデアが詰め込まれているが、なかでも、自然換気システムの導入と継続的な性能検証に伴う運用改善の取り組み、および冷却塔を併用した地中熱ヒートポンプシステム(GSHP)の自立運転制御による省エネルギー化の取り組みが特筆される。
本業績の主たる評価点は以下のとおりである。
- 導入された自然換気システムは、風力換気ならびに温度差換気の両者を積極的に利用する設計になっており、外気導入には定風量機能を有する自然換気口を利用し、フロア中央部の吹き抜け空間を利用してトップライトの両脇に設置された排気口より排気する経路となっている。自然換気を積極的に利用するためには、給気口の最適な開閉制御が重要となるが、現時点で汎用的な設計法が確立されているわけではない。すなわち、一定のフレキシビリティを有する設計を行ったうえで、運用段階で最適化を図る必要性がある。本オフィスビルでは、竣工以来、継続して自然換気の省エネルギー性能の定量評価と自然換気実行条件の最適化を行っており、加えて対応する数値解析モデルの検証も行っており、自然換気を利用した設計手法確立のための重要なデータの蓄積にも成功している。
- 地中熱ヒートポンプシステムに関しては、冷房(地中放熱)過多による地中温度の上昇を抑制する目的で冷却塔を導入しており、その運転条件を自動的に判定する自律運転制御を導入することで、冷房過多の運転条件にも対応したうえで、冷却塔の運転によるエネルギー消費の抑制を行うシステムを確立している点が評価される。実測ならびに数値シミュレーションで有効性の検討を実施しているものの、現状、運用段階での検証データでは、設計で想定された熱負荷よりも運用段階でのピーク値が小さく、冷却塔が必要な状況に至っておらず、この点では運用データを用いて制御の最適化を進めるための課題抽出が行われている段階と判断される。
以上のとおり、本業績は,近年の環境配慮建物ではほとんど必須条件といえる各種の環境配慮技術を盛り込んだオフィスビルの計画と運用段階での性能検証に関するものであり、導入された環境技術の中で、特に自然換気システムの最適化に関する技術開発は特筆に値する。建物竣工後、数年間にわたる実測調査と対応する数値シミュレーションのデータを基に、自然換気給気口の最適開閉条件を整理したうえで、自然換気導入に伴う省エネルギー性能を定量的に評価している。自然換気システムはその省エネルギー性能と居住者の快適性、生産性を維持、向上させるために期待される技術であるが、汎用的かつ普遍的な設計法が確立されていないのが実情である。この点で、本業績は自然換気システムを導入する場合の空調設備設計の高精度化に大きく貢献するものであり、高く評価できる。
よって、本業績は空気調和・衛生工学会振興賞技術振興賞に値するものと認める。