空気調和・衛生工学会 九州支部

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九州支部での受賞実績

博多区新庁舎~大型庁舎における汎用設備によるZEB計画と運用実績

博多区新庁舎~大型庁舎における汎用設備によるZEB計画と運用実績

計画・施工  : 大成建設㈱
監理     : 西日本技術開発㈱
施工     : ダイダン㈱
施工     : 大成設備㈱

[推薦文]
 本業績は、九州の玄関口である福岡市博多区に所在する地上10階、延べ面積約15,000㎡、2階柱頭免震構造を採用した鉄骨造の区庁舎である。1971年に建設された旧庁舎の耐震不足による建て替え事業であり、2021年12月に竣工したもので、①機能維持のためのBCP対策、②BELS(ZEB Ready)認証の取得、③CASBEE-WOのSランク取得、の3つをコンセプトとして掲げ、これらを達成している。更に、完成後1年間の運用実績の確認を行い、実際の運用段階においてもZEB Readyが実現できていることを確認している。
 本業績の主たる評価点は、以下のとおりである。

  1. 区役所事業継続による市民の安全・安心を確保するため、災害拠点庁舎として、水害時の免震装置の水没にも配慮した2階柱頭免震構造を採用している。地震等によるインフラ途絶に対して、72時間事業継続を可能にする様々な防災機能を備えている。また、発電する外装システムとして、ガラスと一体化したシースルータイプ11㎡と、外壁材として使えるソリッドタイプ42㎡を設置している。合計の発電能力としては約6kWとなり、通常時の電力負荷低減のみならず、6.5kWhの蓄電池を併設することにより、停電時の自立運転が可能となっている。
  2. ZEBを実現するに当たり、「熱負荷の低減」、「自然エネルギーの活用」、「高効率機器の採用」の3つを設計コンセプトに掲げ、これらを軸に、省エネルギー計算WEBプログラムによる検討を行い、電気式モジュールチラー(30HP×4セット、合計能力340kW)+電気式ヒートポンプPAC方式(1フロア4系統を基本、合計1,410kW)を採用している。環境負荷が低く、ランニングコストを抑えた設備計画を行ない、大型庁舎で九州初のZEB Readyを取得している。
  3. 環境にも人にも配慮し、脱炭素に向けた省エネ、創エネ技術の導入により、CASBEE-建物のSランク認証を取得している。さらに、計画段階から「ココロの健康×カラダの健康」をテーマとし、職員と来庁者、双方の利便性や心身の健康へ配慮した計画を進め、国内庁舎初のCASBEE-WOのSランク認証を取得している。
  4. 完成後1年間の運用実績の確認を行ない、実際の運用段階においてもZEB Readyが実現できることを確認している。加えて、実績に基づく運用改善提案により、さらなる省エネルギーを目指している。

 建物のメインファサードが東面であるため、外壁の開口率を約26%に抑えるなどの「熱負荷の低減」、昼光センサーによる照明調光制御、外気冷房導入といった「自然エネルギーの活用」、全熱交換器組込み外調機や高効率ヒートポンプ給湯器といった「高効率機器の採用」により、設計値は639MJ/(㎡・年)となり、WEBプログラムによる基準値1,291MJ/(㎡・年)より50%削減となっている。また、定期的なレポートなど、エネルギーサポートセンターが、ZEB化推進を積極的にサポートし、2022年5月から2023年4月の1年間の一次エネルギー消費量の実績値は410MJ/(㎡・年)であり、BEI値は0.32となった。基準値より68%、設計値639MJ/(㎡・年)より35%の削減となり、ZEB Readyを設計段階のみならず実績値においても達成している。また、CASBEE-WOのSランク認証を取得していることから、快適性を損なうことなくZEB化が実現されている。

 よって、本業績は空気調和・衛生工学会振興賞技術振興賞に値すると認める。

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