R5年度
R4年度
- 嘉麻市庁舎の環境設備計画
- サンエー浦添西海岸PARCO CITY-沖縄の地域性を活かした先導的省CO2技術を活用した商業施設-
- 熊本桜町再開発地下水都市熊本における大規模かつ持続可能な地下水利用熱源の計画と実施
- 博多駅南RビルにおけるZEB改修効果の評価・検証
R2年度
R1年度
平成31年度
平成30年度
平成29年度
平成28年度
平成27年度
平成26年度
平成25年度
平成24年度
平成22年度
平成21年度
平成20年度
JR熊本駅ビル
JR熊本駅ビル
計画・設計・検証・評価 : ㈱日建設計
計画 : ㈱JR熊本シティ
検証・評価 : ㈱日建設計総合研究所
検証・評価 : 尾崎明仁
計画・検証・評価 : 篠原奈緒子
[推薦文]
本業績は、熊本駅前複合開発の中核施設として2021年4月にオープンした、ホテル、商業施設、映画館、結婚式場などを有する地上12階、地下1階、延床面積約86,300m2の複合ビルである。屋根が幾重にも重なる建物外観は熊本城の城郭を表現し、イベント広場の大屋根は強い日差しを遮るとともにテラスとして遊び場を提供する。バイオフィリックデザインを基本に建築、ランドスケープと設備・環境計画が一体的に進められ、その象徴となる「立体庭園」は自然を身近に感じられる居場所となっている。設計・施工の段階から環境シミュレーションや実験、実現手法の効果検証によって細かな仕様調整が繰り返され、竣工後は効果検証と運用へのフィードバックが継続的に実施されている。
本業績の主たる評価点は、以下のとおりである。
- 立体庭園の計画では、居住域のみの必要最小限スポットFCUの採用、滝周辺での輻射・除湿ルーバーの配置によって自然の滝を感じさせる温湿度環境が再現されており、吹き抜けを利用した自然換気ハイブリッド機械換気の採用で、中間期の自然通風による省エネ化や、空調冷水を利用した20℃の滝水による夏期冷却効果の促進が図られている。竣工後の回遊行動調査やSNSの投稿データ分析で、立体庭園が集客や駅ビルの魅力度向上に寄与することも確認している。
- 夏期の吹き抜け上部の熱だまりや冬期ガラス面のコールドドラフト等の課題に対しては、設計時の温熱環境シミュレーションにより確認・調整を行い、竣工後も実測調査や詳細シミュレーションによってその状況は検証されている。自然光や自然の音についても同様な検証が行われており、これらの検証結果を反映したチューニングが実施されている。
- 実測ならびにアンケート調査から、滝近傍で温湿度の傾向として1階部分での滝による過乾燥防止効果、夏期の滝運転時における0.5℃~1.4℃程度のMRTの低下、ガラス壁泉の表面温度が1.5℃ほど低くなる等の冷却効果が検証されている。また、PMV値と利用者の温冷感や快適性との対応から、バイオフィリックデザインによる心理効果や熱環境調整機能も確認されている。
運用開始後の実績では、冷水(7℃→10℃)、温水(45℃→35℃)の送水温度緩和により空冷モジュールチラーのCOPが冷房時(3.35→3.56)、暖房時(3.72→4.57)ともに良化し、約6%の熱源一次エネルギー削減に相当する。また、6月~9月における外調機間欠運転によるファン停止で消費電力削減を図るとともに、屋外熱源機器周辺への散水により契約電力4,000kWに対して8月1日~9月末までで3,850kW(▲150kW)、10月1日以降でも3,760kW(▲90kW)と電力デマンドの削減効果が確認されている。これらの取り組みの結果、ホテル(個別熱源・給湯)を除く商業部分での年間一次エネルギー消費量は、コロナ禍でオープンした2021年度に1,761MJ/(m2/年)、コロナ後の2022年度で1,794MJ/(m2/年)と微増に留まっている。熱源一次エネルギー消費量でみると、2021年度が408MJ/(m2・年)(システムCOPで1.31)、2022年度で384MJ/(m2・年)(システムCOPで1.34)と改善されている。さらに豊富な地下水を利用したことで、全館での水使用量は1日あたり3.72L/m2で、空気調和・衛生工学会便覧によるホテル(9~11L/m2)やデパート(14L/m2)に比べても極めて少ない。
よって、本業績は空気調和・衛生工学会振興賞技術振興賞に値するものと認められる。