空気調和・衛生工学会 九州支部

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九州支部での受賞実績

快適空調環境に向けた「カクテル空調機」の開発

快適空調環境に向けた「カクテル空調機」の開発

開発・設計・施工:(株)九電工
開発・実証   : 石原 修
実証      : 村田 泰孝

 本業績は、空調機の熱交換器を2段以上の多段に分割した、多段型熱交換器式空調機の開発に関するもので、申請者らは「カクテル空調機」と名付けている。このカクテル空調機は、熱交換器を多段に分割し、各段の循環水量を調整する制御弁(電動二方弁)を個別に設置するものである。これにより、全体の循環水量で空調負荷に対応する一方、局所的に低温なコイル部分での除湿が可能であり、室内設計温度28℃においても再熱無しで相対湿度60%以下の除湿制御が可能である。さらに、機器増設に対する対応やフェールセーフ機能の担保等を目指し、一般的な(従来型)のエアハンドリングユニットを連結させた拡張型カクテル空調機を開発している。

 本業績の主たる評価点は、以下の通りである。

 従来型の空調機では一般的に部分負荷運転時の除湿や、再熱エネルギーの消費に課題を抱えている。一方、新開発のカクテル空調機は分割された熱交換器の運転を個別に制御し、100%負荷時の条件と同様に除湿された空気と、除湿されていない空気を混合させることで調湿を行うメカニズムである。このため、高精度での調湿能力を発揮する。また、再熱量も低減できる。このアイデアは数値流体解析による詳細な基礎検討、実機を用いた実験を経て有効性が検証されている。その後、空調機設計にフィードバックさせることで、実用的なレベルでの空調機設計を実施している。更に、カクテル空調機の実機を製作し、オフィスビルに実装した上で、2011年夏期に実測調査も実施しており、オフィス内温湿度が設計目標どおりに制御されていることを確認している。

 本業績は、空調機の熱交換器を多段に分割した、いわゆる多段型熱交換器式空調機「カクテル空調機」の開発とそのオフィスビルへの実装に関するものであり、特に夏期の調湿性能に関して、詳細な数値解析、精緻な基礎実験、オフィス空間を対象とした実測調査等を通じて有効性、汎用性を検証している。多段に分割した熱交換器の運転を個別制御することで、効率的に部分負荷運転に対応することを可能とし、また調湿・再熱低減に関して有効と考えられる。また、従来型のエアハンドリングユニットを1モジュールとしてとらえ、連結運転させることで多様な負荷条件に対応させた上で、フェールセーフ機能を担保させる拡張型カクテル空調機の発想は、従来の空調機設計には無い独自のアプローチであり、これらに関する一定の評価が可能である。

 よって、本業績は空気調和・衛生工学会振興賞技術振興賞に値するものと認める。

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