空気調和・衛生工学会 九州支部

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R4年度

R2年度

九州支部での受賞実績

JS博多渡辺ビル

~テナントオフィスビルでZEBの実現と更なる省エネルギー性向上・WELLへの取り組み~

設計・施工     : 大成建設 株式会社(福岡)
空調施工・衛生施工 : 大成建設 株式会社(東京)

 本業績は、福岡市博多区の博多駅前に所在する地上7階、延べ面積約6,200m2、の建物で、国内で最も早い段階でZEB Ready認証を取得したテナントオフィスビルである。南側にコアを配置する計画で、北・東・西側は日射負荷を軽減する縦連窓のファサードを形成する。オフィスビル全体で76%を占めるテナントオフィスビルに焦点をあて、「市場性のあるZEB」の普及実現と総合的な付加価値向上を目的に、「ZEB Ready認証の取得」、「省エネルギー性能とBCP性能の更なる向上」、「快適性(WELL)の向上」、「運用実績におけるZEB Readyの実現」をコンセプトとして構築、実践されたプロジェクトである。
 本業績の主たる評価点は、以下のとおりである。

  1. 外壁開口率を20%程度に抑え、基準階オフィスの窓の主方位である北面からの昼光利用、高遮熱型Low-eガラスの採用による外皮熱負荷の軽減、CO2センサによる外気量制御で外気負荷を軽減、LED照明や高効率パッケージ型空調機、外気処理用の高効率チラーや全熱交換型外調機などの導入で省エネルギー性の向上を図っている。
  2. 独自開発した次世代型節電・省エネルギー自動環境制御システム(T-Zone Saver)による照明制御の有効性を検証するとともに、空調室内機への制御にも応用して執務者不在時の空調設定温度の緩和や、パッケージ型空調機の冷媒蒸発温度を効果的に変更するなど、省エネ計算Webプログラム(エネルギー消費性能計算プログラムVer2.2.3)では評価できない技術の採用で更なる省エネルギー性能の向上を図っている。また、BEMSと統合し、防災設備を見える化することによりコントロールするT-BC Controllerを開発し、その導入によってBCP性能の向上も図っている。
  3. 快適性(WELL)向上の取り組みとして、採光と遮光を兼ね備えた一体型のブラインドである採光装置(T-Light Blind)を開発し、オフィスの一部に導入することで照明エネルギーの削減、執務空間の開放感や快適性の向上に寄与している。また、潜熱蓄熱材(PCM)空調システムの採用により温熱環境的に不利な最上階のペリメータエリアの快適性の向上と省エネルギー化を図っている。
  4. 竣工後は、エネルギーサポートセンターを東京に設置し、WEBを利用した遠隔BEMSを採用することで、当該ビルの入居者、管理者との連携による管理体制を確立し、エネルギー分析、運用改善の検討に取り組んでいる。

 汎用的な設備システム構成でZEB化の実現を目指した本業績では、外壁の高断熱・高遮熱化により空調機容量を下げたうえで、高効率空調設備、LED照明、人検知照明制御等を採用することにより、計画段階でのエネルギー消費量では基準一次エネルギー消費量比で52%削減を達成している。さらに、独自の開発技術を基盤とする様々な制御手法を積極的に採用することで、運用段階での実績においても基準一次エネルギー消費量に対して63.4%削減を実現している。

 よって、本業績は空気調和・衛生工学会振興賞技術振興賞に値するものと認められる。

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