空気調和・衛生工学会 九州支部

TopPage

九州支部での受賞実績

伊万里有田共立病院

伊万里有田共立病院における外気負荷削減手法の構築と検証

計画・施工:(株)日建設計
施工   :(株)九電工
実証   : 白石 靖幸

 本業績は、地域の中核病院を対象とした独創的な外気負荷削減手法の提案とその性能検証に関するものである。昨今の外気CO2濃度の上昇に伴い,室内のCO2濃度基準である1,000ppmの妥当性に関して議論が行われているものの、未だCO2は室内空気質の代表的トレーサとして有効とされ、外気導入量算定の根拠として頻繁に利用されている。この点では、空気質評価のための指標に関して、今後、検討の余地が大いにある。このような空気質評価の状況下、本建物では、共用部分である廊下を換気経路と見なし、廊下を介して各病室に新鮮外気を分配するダクトレス給気方式を採用し、空気汚れセンサにて空気質モニタリングすることで、各病室の排気ファンの運転制御を行う簡易型のデマンド制御型換気システムを開発している。

 本業績の主たる評価点は以下のとおりである。

  1. 一般環境中での濃度センシングの場合は、トレーサガスの選定が困難となるが、本業績の対処が病院であることより、アンモニア、トルエンなどに感度を有する汎用型の空気汚れセンサを用いており、この有効性を実測にて詳細に検討した結果も報告されている。
  2. 夏期ならびに冬期の詳細な実測調査をとおして、空気汚れセンサによるフィードバック機構を組み込んだ排気ファン制御を行った場合、制御を入れない場合と比較して大きな排気ファン一次エネルギー削減量が達成されることを実証的に確認しており、また外気導入量が最適化されることで、空調負荷も大きく削減できることを提示している。
  3. 病室のように、24時間の使用を前提とした空間では、トレードオフとなる各種の室内環境因子、快適性、健康性、衛生性と経済性を考慮した上でバランス良く達成する設計が求められるが、現地調査にて高いレベルで室内環境制御が達成されていることを確認した。
  4. 敷地の段差を有効に利用したクールチューブ介して、スタッフスペースを対象とした換気も行っており、導入外気量の最適化に伴う外気負荷削減を極限まで追求する姿勢には強く共感する。
  5. 開発・導入された各種技術の効果を最大限享受し、最適運用するためのスタッフ教育にも配慮しているほか、各種成果を適切かつ明快に社会発信するための努力を継続している。

 本業績は、各種アイデアを基に、徹底的に外気負荷削減と良質の室内環境維持を両立する環境設計に取り組むとともに、実測によりその効果を定量的に評価したものである。特に、廊下を換気経路とみなしたイニシャルコスト削減に寄与するダクトレス給気、CO2に代わる病室特有の空気質をモニタリングする空気汚れセンサの導入、各室排気ファンのデマンド制御、ランニングコスト削減に寄与するクールヒートトレンチなどを相乗的に組み合わせ、統合し、高いレベルの外気導入システムとしてまとめ上げている。これらにより個別の省エネルギー技術を単純に足し合わせるだけでなく、全体システムとしての相乗的効果や最適化が図られた完成度の高い環境設計が達成されており、高く評価できる。

 よって、本業績は空気調和・衛生工学会振興賞技術振興賞に値するものと認める。

Pagetop