空気調和・衛生工学会 九州支部

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九州支部での受賞実績

大分県臼杵・リニューアル半導体後工程工場

半導体後工程生産工場における省エネルギー熱源・空調システム

計画: 仲谷マイクロデバイス(株)
計画・設計・施工: 新日本空調(株)

 本業績は、2005年4月に工場閉鎖となった旧日本たばこ産業(株)臼杵工場のリニューアル工事を行い、2006年1月に誕生した大分県内最大規模の半導体後工程工場の熱源や空調システムに供せられた省エネルギー技術に関するものである。今回の施工範囲は旧工場の約40%、12,900㎡である。本業績では、熱源システムとして高効率型遠心冷凍機(吸収冷凍機は予備)+蒸気貫流ボイラ方式、空調システムはダクト型空調機(一部ファンコイルユニット)方式を採用している。
 本業績の主たる評価点は、以下のとおりである。

  1. 半導体後工程は前工程ほどの清浄度を必要としないが、生産機器からの発熱が大きく、年間を通して冷房運転が行われるほか、室内の清浄度を維持するための循環風量ならびに冷却のための減湿空気量とも大きい。そのため空気搬送動力の低減が省エネルギーを図る上で重要であり、システム天井方式を採用して、搬送動力の削減を図っている。この結果、年間820MWHの搬送動力削減を達成している。
  2. 従来のような外気・室内負荷とも1台の空調機での処理では、夏季・中間期の冷却・除湿過程での除湿優先に起因する過冷却と室内温度維持のための再熱が発生する。そこで、外気の冷却・除湿負荷を受け持つ外調機、機器発熱・建物・照明などの顕熱負荷を受け持つ空調機を別個に設置し、潜熱処理と顕熱処理の役割分担を行い、過冷却・再熱の無駄を回避している。この結果、従来方式に比して、年間蒸気削減量5,672t、冷凍機電力削減量842MW・hとなっている。
  3. 冷凍機は、常用として成績係数(COP)のよい高効率遠心冷凍機(800SRt×2台)、予備として既設の蒸気吸収冷凍機を使用している。2006年4月~2007年3月までの1年間の熱源設備運転実測データによれば、冷凍機が単独運転の期間は、年間目標COP5.9をほぼ達成し、冷凍機が並列運転の場合は、部分負荷運転(40~50%)となりCOPが低下するものの、8月においても月間平均4.9である。その結果として、年間858MW・hの電力削減を達成している。
  4. 遠心冷凍機は冷却水温度が下がるほど成績係数(COP)が向上する。外気の湿球温度が高い夏期でも冷却塔2台(各々50%流量)を連結して運転することにより、冷却水温度は4℃低下し、冷凍機のCOPは6%改善している。また中間期・冬期には冷却水温度を20℃までの範囲で下げ、最大17%のCOPの改善がみられている。
  5. それらのほか、冷水の大温度差送水(温度差10℃)による搬送動力の削減(約45%低減)、省エネルギー型ドライヤー内蔵圧縮空気設備の採用(従来機種に比べて年間1474MW・hの電力削減)などによる省エネルギー化を図っている。

 本業績は、旧タバコ工場の高気密、高階高の特性を生かしたリニューアル工事を行い、省エネルギー・省メンテナンス・省スペースを図った半導体後工程工場としたものである。顕熱・潜熱処理の分離(外調機と空調機の設置)、システム天井利用の空調方式、生産機器の排気エネルギー有効利用、省エネルギー型ドライヤー内蔵圧縮空気設備などの半導体後工程工場に特化した省エネルギー手法と、高効率冷凍機の採用、冷却塔の連結運転、フリークーリング、大温度差送水などの汎用省エネルギー手法を併用して、徹底したランニングコストの低減を達成している。

 よって、本業績は空気調和・衛生工学会振興賞技術振興賞に値するものと認める。

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